木村屋のむしケーキ誕生秘話
1981年(昭和56年)の春、木村屋總本店の「むしケーキ」※が完成しました。「むしケーキ」が完成するまでには、さまざまな苦労がありました。
当時、すでに「蒸しパン」はありましたが、いずれも老化が早く、特に低温で硬くなり、口溶け、風味が悪いものでした。そこで、開発のテーマは、『老化が遅くて、長時間保存しても食味の落ちない蒸しパン』に決まりました。
まず素材の開発、配合から始まりました。
例えば油脂は、動物性油脂であると風味、ソフト感、口溶けが悪い傾向があります。逆に、常温で流動性のある植物性油脂は良いが、それでも油脂量が少ないと老化が早く、多すぎると生地が軟らかくなって商品のボリューム感が出ない上、食感が悪い傾向があります。その配合をどうするか…
そして砂糖は、卵は、その配合は…と根気のいる研究が長く続いたのち、材料の配合率が決まりました。この配合は、従来の蒸しパンと比べると、油脂、砂糖、卵の量が多くなったのが特徴でした。さらに乳製品、ベーキングパウダー、香料その他の割合が決まりました。
配合が決まると、混ぜた生地を低温で寝かせました。普通の蒸しパンは時間を置かずに蒸し上げますが、それよりも高配合の「むしケーキ」は、低温で長時間寝かせる方がおいしい、と繰り返しテストが行なわれました。
また、最終的に工場のライン上で作るために、蒸気の流通も研究しました。
こうして、硬くなりにくい、口溶けの良い、それまでの蒸しパン、カステラ、饅頭類と異なった“ひと味”風味を持つ商品が完成しました。
※「むしケーキ」…従来の「蒸しパン」の要素に、新たに洋菓子の「ケーキ」の要素を加えたことから、『むしケーキ』と名付けました